2019年5月27日月曜日

日本の引きこもり問題

世界的に注目される日本の引きこもり問題。その実態を探る最新研究結果が発表される(日本研究)
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 学校にも仕事にもいかず、家にこもって社会的な交流をほとんど絶ってしまう。こうした状態が6か月以上続いた場合、日本の厚生労働省は「引きこもり」と定義としている。

 「引きこもり」という名称は日本の言葉だが、海外でも「Hikikomori」として認知度が高まっており、世界的に注目を集めている。

 だが「引きこもり」に関しての研究はあまり進んでおらず、心理学的にはあまりきちんと理解されていないのが現状だ。

 今回、秋田大学が発表した研究結果は、引きこもりの実態に迫ったものだ

引きこもりの実態に迫る最新研究


 正確な数字は不明であるが、2016年の内閣府の調査によると、15~39歳の日本人の54万1,000人(1.79%)が引きこもりであるとされている。

 これについてリスク因子に関する仮説はあるものの、大規模な人口ベースの研究はない。今回の発表された研究は、そのギャップを多少なりとも埋めるものだ。


引きこもりは都市部だけに限らない


 秋田大学、野村恭子氏率いる研究チームは、日本各地の200の自治体から無作為に抽出された15~39歳の男女3287名を対象とした。

 子供を持つ親たちに、彼らが外出する頻度(しない場合は引きこもる長さ)を質問。過去6ヶ月の間に家から外出しなかった/ほどんど外出しなかった人たちが引きこもりと判断された(ただし、きちんとした理由(妊娠や宿題など)がある、専業主婦である、統合失調症である人はこの限りではない)。

 また、あわせて人口統計データも収集した。

 これまで引きこもりは主に都市部での現象であると言われてきた。だが、この研究からは違う現実が明らかになった。

 データから浮き彫りになったのは、回答者の1.8%が引きこもりで、田舎にも大都市と同じくらい引きこもりがいるということだ。

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女性よりも男性の方が多い


 また男性に多いと言われる症状であるが、今回初めて疫学的証拠によってその正しさが証明された。ただし、それでも引きこもり58人に20人が女性であった。

 引きこもりと地域・家族の人数・社会階級との関係性は発見されなかったが、商業施設や店舗が多い地域で暮らしているという気になる点も見つかった。


引きこもりの人によく見られる特徴


 引きこもりの人によく見られた特徴は、精神病の治療歴、学校の中退歴、自傷癖などがあったが、最も重要かつ強力な要素は、「人付き合いを非常に苦手としている」ことであった。

 このことは「知り合いに会うのが怖い」「他人にどう思われているか気になる」「集団に入っていけない」という質問への回答に現れていた。

 このことについて論文では次のように述べられている。

こうした不安は羞恥心と関係しているのかもしれない。彼らは自分の今の状況を知られることを恐れていると示唆されているのだ。

引きこもりと人付き合いの苦手さとの関連性が示すのは、引きこもりの人は面識のある人やコミュニティを恐れているということだ。この点において、対人恐怖症や一般的な社会不安のような症状とは異なる


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どうすれば引きこもりを防ぐことができるか?

 こうした発見は、その治療の方向性をも示唆している。

 つまりコミュニケーションスキルを向上させるような訓練を行い、過度に人目を気にしないよう上手くコントロールしてあげることで、徐々に外に興味がいくようになると考えられるのだ。

 これは簡単なことではないが、実際この治療法で一定の成果をあげているケースもあるという。

 だが、そもそも何が彼らをそこまで不安にするのか?最初に家にこもらねばならなかった理由は何だろうか?

 研究で明かされているのは、高校や大学の中退歴である。これをきっかけに知り合いに会うのを恐れるようになり、やがては家に閉じこもるようになるのだ。

 ならば、若い人たちが学校にとどまれるよう支援することができれば、引きこもりになるリスクを下げられるかもしれない。

 また引きこもりの37.9%に精神病の治療歴があることも注目に値する。野村氏らが言うように、医薬に依存する人たちの引きこもり率の高さには警戒を要するだろう。

 こうした要素がどのように関連しあっているのかについては、解明には程遠い。だが、今回の研究は今後の調査の方向性を指し示す、優れた指標となるはずだ。

 この研究論文は『Frontiers in Psychiatry』に掲載された。

 最近では引きこもりの長期化が問題となっており、2018年12月に行われた内閣府の推計値によると、40歳から64歳の引きこもりは推計で61万3,000人と、39歳以下を上回ったという。

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