いくつになっても創造力を高めたいと願う人にとって、このような新しい研究は嬉しい知らせだろう。
創造性といえば若者ならではのものといったイメージがあるが、アメリカ・オハイオ州立大学のブルース・ウェインバーグ氏とシカゴ大学のデビッド・ギャレンソン氏によれば、創造性の種類にもよるのだそうだ。
コンセプト的創造性ならば20代半ばがピーク、経験的創造性なら50代に入ってからがピークなようだ。
創造性の2つの種類「コンセプト型」と「経験型」
『De Economist』(4月26日付)に掲載された研究では、人は一生のうち2度、それぞれ種類の異なる創造性のピークを迎えると述べている。
誰にも思いつかないような斬新なコンセプトで勝負をするなら、おそらく20代半ばが一番ノリノリな時期だろう。
しかし経験や実験を通して革新的な成果を挙げようというのなら、脂が乗ってくるのは50代に入ってからだ。
このような違いがある理由は、奇想天外な新しい発想がひらめく人たち——つまり「コンセプト型」の人たちが、その分野の常識にとらわれる前に結果を出さねばならないためだ。
他方、経験を通じて成果を挙げる人たち——「経験型」の人たちは、数十年にわたる試行錯誤を繰り返し、普通なら見えない点と点をつなぎ合わせるための知識を身につけることで、その分野の常識を超えていかなければならない。
芸術家にもある2つの創造性のタイプ
じつはウェインバーグ氏とギャレンソン氏は以前、芸術家や作家の創造性をテーマに今回と同様の研究を行なったことがある。
コンセプト型は、特定の思想や感情を伝えようとするタイプの芸術家で、作ろうとする作品に明確なゴールがあり、事前に入念に計画を練り、それを実行する。
たとえば、パブロ・ピカソ、T・S・エリオット、ハーマン・メルヴィル、アルバート・アインシュタインなどがこのタイプの人たちで、いずれも若い頃に傑出した業績を挙げている。
一方、経験型の芸術家は、目指すは野心的だが曖昧なものであり、それが形になるまでにかなり時間がかかる。
このタイプで高名なのは、ポール・セザンヌ、ロバート・フロスト、ヴァージニア・ウルフ、チャールズ・ダーウィンといった人たちで、彼らはみな遅咲きである。
ノーベル経済学賞受賞者にも当てはまるか?
両名は、この芸術家を対象に行なった分類を、ノーベル経済学賞の受賞者である31名の研究者に対してもやってみることにした。
経済学者のみにしぼったのは、分野特有の要件によって結果が左右されることを避けるためだった。
これより以前、別の社会学者によって、学術界のさまざまな分野における創造性のピークを比較するという研究が行われたことがある。それによれば、30歳から40歳が学者の創造性のピークであった。
しかし、もしかしたら学問の分野によっては、コンセプト型が有利だったり、経験型が有利だったりするかもしれない。この場合、分野ごとに必要となる能力や要件の違いによってデータにゆがみが生じてしまう。
経済学という単一の分野のみを扱えば、こうしたゆがみは生じない。
創造性のピークは、経済学にもっとも貢献したと評される研究が発表された時期によって判定された。要するに、ほかの学者からもっとも多く引用された研究が発表された年が創造性のピークとみなされた。
分類の結果、ノーベル経済学賞受賞者でも同じくコンセプト型と実験型にわけることができた。
コンセプト型の受賞者は、ぱっと独創的な発想を得て、常識に挑むタイプで、若いうちから画期的な業績を残している傾向にあった。ただし、そのような彼らのピークもまた訪れるのは早い。
しかし経験型の受賞者の場合、実験や試行錯誤から学ぶ長い期間が必要で、優れた業績はもっと後になってから挙げられる傾向にあった。
コンセプト型のピークは20代、経験型のピークは50代
全体で見ると、コンセプト型の受賞者のピークは25~29歳で、経験型のそれは50代半ばであった。創造性には若い人たちの特権といったイメージがある。しかし今回の研究は、それが物事の一面のみをとらえた偏見にすぎないことを明らかにしている。
ある人の創造性のピークが比較的早い時期に訪れるのか、それとももっと後に訪れるのかは、コンセプト型か実験型かによって違うのである。
もちろん個人差もあるだろう。若干の時期のずれはあるだろうが、年を取ったからと言って、創造性をあきらめる必要はないのだ。
この新しい発見によって、若い創造的な才能だけでなく、年齢を重ねた末に発揮される創造性にも注目が集まることをウェインバーグ氏らは願っているそうだ。
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