2019年6月11日火曜日

原発事故があったチェルノブイリ

原発事故があったチェルノブイリに今、観光客が押し寄せている。アメリカのテレビ番組がきっかけで(ウクライナ)
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 史上最悪と言われているチェルノブイリ原子力発電所事故が起きてから今年で33年となる。事故による被害は甚大なものだったが、人がいないことが幸いしたのか、今では自然が蘇り、多くの野生動物たちの住み家となった(関連記事)。
 そんな中、最近チェルノブイリが脚光を集めているという。多くの観光客が押し寄せるようになったのだ。
 きっかけは、アメリカのケーブルテレビ放送局HBOが制作したドキュメンタリードラマだ。原発事故の裏側で戦った人々たちの姿が巧妙に描かれているミニシリーズ『Chernobyl(チェルノブイリ)』を見た人々らの反響は大きく、一目その場所を見ようと、世界各地から訪れているのだ。 

史上最悪の原子力発電所事故が起きたチェルノブイリ


 1986年4月に発生した原子炉4号の安全性テストの失敗により、ヨーロッパの大部分にまで放射線物質の雲が流れる大惨事を引き起こしたチェルノブイリ原子力発電所のニュースは、世界中で報じられた。

 事故直後、最初の数か月で31人が死亡したと伝えられ、その後WHO(世界保健機関)では約9,000人が放射線被ばくにより死亡したと推定された。

 一方、ベラルーシの研究では、この事故による総がん死亡人数は115,000人と推定されている。この人数については証明する科学的根拠がないとされ、議論の対象となっている。

こうした人的被害もさることながら、被害を受けた現場は世界が滅亡した後のような荒れ地と化したが、のちに自然が蘇り、今では多種多様の生態系が育まれている。

アメリカのテレビ番組放送後、ツアーの予約は40%も増加

 しかし現在、この地では多くの観光客の姿であふれている。2019年5月6日に公開されたアメリカのテレビ局HBOのミニシリーズのドキュメンタリー番組『チェルノブイリ(Chernobyl)』の影響によるものだ。

 世界規模の事故となった現場周辺は、現在も立ち入り禁止区域として厳しい規制が敷かれているが、昨今はウクライナ政府が放射線レベルの低下を発表したことにより、現地を訪れる人の数も増えていた。
 現地のツアー会社によると、2019年5月のチェルノブイリへの観光客は前年同月比で30%増加しており、『Chernobyl』が公開された後の6~8月の観光予約数は、約40%も増えたという。



 中には、番組内に出てきた場所を案内する特別ツアーを行っているツアー会社もあり、英語でのツアーは1人当たり100ドル(約11,000円)前後だそうだ。

 キエフからのバスで観光客らが向かうのは、チェルノブイリとその隣のプリピャチ市だ。
 プリピャチ市は、かつてチェルノブイリの工場で働いていた人々を含め5万人ほどが住んでいたが、事故後はゴーストタウン化。止まったままの巨大観覧車や錆びた回転木馬がひっそりと佇んでいる。


 ツアーによっては原子炉4号の見学もあるが、2017年以降は高さ105メートルの広大な金属ドームによって覆い隠されているという。


 現在インスタグラムには、廃墟や犠牲者たちの記念碑などを訪れている観光客の姿が数多く投稿されている。

「現地の放射線量は安全レベル」とツアーガイド

 何の保護服も着ず、ホットスポット(高濃度汚染地域)を背景にポーズを取る人々を案内するツアーガイドの1人、ビクトリア・ブロズコさんはこのように話している。

HBOシリーズの『Chernobyl』を見てここにやって来る多くの人は、様々な質問を投げかけてきます。

原発事故について、もっと知りたいという人が確実に増えているということです。チェルノブイリとプリピャチを訪れる人の数は、今後数か月で更に増加する可能性があります。


チェルノブイリは厳粛な雰囲気を漂わせる一方、とても美しい場所です。ウクライナで旧ソ連の雰囲気を本当に感じられるのはここだけです。

今は、放射線の影響も問題ないといえるでしょう。立ち入り禁止区域とされた場所へ入っても、被ばく線量は2マイクロシーベルトのみで、このレベルは人体が日常的に受けている自然放射線量と同じなのです。

観光地化したチェルノブイリに寄せられる賛否両論の声

 『Chernobyl』製作者のクレイグ・メイジン氏は、
私は宗教的な人間ではないが、今までに感じたことがないほど、この場所は宗教的に感じた。被害を受けた人々が歩いた場所を歩くことはとても不思議に感じた。

また、彼らが経験した出来事がそのまま伝わってくるように思え、同じ空の下にいると彼らと少し近づけた気がした

と語っている。
 しかし、ホットスポットがすっかり観光地化している現象については、賛否両論の声もあがっている。

・キエフに旅行する計画を立てている途中で、ドキュメンタリー番組のことを知って偶然見たの。今ではネット上でもすっかり有名になっているみたいだし、キエフに行くなら絶対にチェルノブイリまで足を延ばさなきゃ。

・廃墟の村の体験を台無しにするほど、現地は既に観光客で溢れている。観光客の増加はチェルノブイリにとってマイナスになるのでは。

 ちなみに、ロシアのテレビ局NTVではHBO同様にこの事故のドキュメンタリーをシリーズ化する計画もあるという。
 しかしこちらは、国が指示したアメリカのスパイが原子炉に潜み事故を引き起こしたと主張するストーリーを考案しているようで、もしかしたらチェルノブイリ原発事故の「真実」を語る番組になるのではないかともいわれている。

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