2019年6月22日土曜日

「悲惨のスパイラル」

悪いニュースは精神を害しさらに悪いニュースを見るようになる「悲惨のスパイラル」を生み出す




ニュースが人のメンタルに影響を与えることはこれまでも知られてきましたが、新たな調査で、災害や事件のニュースでメンタルに悪影響を受けた人は、その後に別の悪いニュースが報道された時により長い時間をニュースに割くようになるという「悲惨のスパイラル」が生まれることが示されました。

Obsessively Reading About Tragedies Can Trap You in a Cycle of Misery, Study Finds
https://www.sciencealert.com/study-shows-news-about-tragedies-can-trap-us-in-a-negative-emotional-cycle

Media exposure to mass violence can fuel cycle of distress, 3-year longitudinal study shows | UCI News | UCI
https://news.uci.edu/2019/04/17/media-exposure-to-mass-violence-can-fuel-cycle-of-distress-3-year-longitudinal-study-shows/

Media exposure to mass violence events can fuel a cycle of distress | Science Advances
https://advances.sciencemag.org/content/5/4/eaav3502

4165人の被験者を対象とした調査から明らかになったのは、災害や事件などの「集団的トラウマ」のニュースを見れば見るほど人は将来に対して不安を覚えるようになり、それがさらに「災害や悲劇のニュースを見る」という行動にかきたてるということ。
この研究を行ったのはカリフォルニア大学アーバイン校の心理学者であるRoxane Cohen Silverさんらの研究チーム。Silverさんは研究結果を受けて、「テロが起こった時やハリケーンのような災害があった時に、人々が不確かな将来を不安に思うのは自然なことです」と述べています。

この研究は2013年に起こったボストンマラソン爆弾テロ事件から2016年に起こったオーランド銃乱射事件までの3年間にわたるニュースのネガティブな影響を調査したもので、被験者は2013年から2016年までの間に4回のタイミングでアンケートに回答しました。過去にも「ネガティブなニュース」と「メンタルヘルス」の関連性を調査した研究は存在しましたが、今回の研究はより長期的な影響に着目したのが新しい点です。


分析を行ったところ、研究者は「ボストンマラソン爆弾テロ事件の後にニュースをよく見たこと」と「その6カ月後に心的外傷後ストレス障害(PTSD)になること」の間に関連性を発見。そして、ボストンの事件でPTSDになった人は銃乱射事件の後にニュースを見る時間がより長くなることが判明しました。

「24時間常に流れ続け、モバイル技術によってどんどん増加していく事件の報道は、画像やビデオ、センセーショナルな物語とともに繰り返されることで、直接事件に関わる人以上の人々にインパクトを与えていきます」「集団的トラウマのニュースに繰り返しさらされることは、事件を直に経験しなかった人にもフラッシュバックのような症状を与え、長期にわたって悪影響を及ぼします」と研究を行ったRebecca Thompson氏は述べています。

人々がメディアにさらされ苦しめられることは、公衆衛生にとっても悪影響であり、調査結果を受けて研究者は「メディアはこれらの事件を報道する際、視聴者の心配や苦痛を過度にあおらず、センセーショナルな側面を和らげた方がよい」と示しました。

また研究者は、ひどいニュースを見た人々が「次に起こること」を予期するためにもソーシャルメディアに釘付けになるのは理解できる、としつつも、このような傾向が過度になりすぎると悲惨なスパイラルへと入りそこから出られなくなるとして一般視聴者にも注意を呼びかけています。



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