2019年6月4日火曜日

「グリーン成長」

経済成長と環境保護を両立させる「グリーン成長」を成し遂げるのが困難な5つの理由
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iamnoonmai/iStock

 「グリーン成長」という言葉を知っているだろうか?

 経済用語に疎い私は、植物の成長のこと?ぐらいの認識だったのだが、持続可能な環境・経済・社会の実現に向けた取り組みのことを言うそうだ。

 要するに、自然の資源や環境を維持しながら、経済成長・開発の促進を両立させるという世界的な動きで、詳しくは環境省の環境白書を参考にしてほしい。
 
 国連や経済協力開発機構をはじめとして、各政府や企業・団体は、このまま効率良く技術的に環境対応をすれば、この先も人類が地球上で変わらず生活していけるサステナビリティ(持続可能性)への達成が叶うだろうと述べている。

 しかし現状は、「グリーン成長」の試みは非常に困難を伴っている。その5つの理由について見ていこう。 

地球を守りながら経済を発展させるグリーン成長


 グリーン成長は自然資源と生態系を適正に保全・活用し、環境分野への投資やイノベーションを通じて新たな市場と雇用を生み出すことも目的としている。

 つまりグリーン成長は、地球を守ることだけでなく経済を成長させる大切なカギとなり、私たち人間社会にも大きく影響を及ぼすものなのだ。

 しかし現状として、「世界各国は自然資源・環境サービスの利用効率化で環境生産性を上昇させてはいるが、その進捗ペースはあまりに遅い」と経済協力開発機構は報告している。

 更には、気候の崩壊、種の絶滅、資源の枯渇といった最も差し迫った環境問題に取り組むことは、グリーン成長の進捗を速めるどころか遅らせることになりかねないと、研修者は警笛を鳴らしている。

 グリーン成長の取り組みが困難な5つの理由は以下の通りだ。

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1.グリーン成長は効率性と比例していない

 理論的に言うならば、環境の効率性を向上させるには経済成長と資源の浪費や環境汚染は切り離されるべきである。

 しかし、建設、農業、運輸などの様々な分野で汚染や資源の使用量の削減が改善されたとしても、環境破壊やエネルギーの過剰消費、CO2大量排出などを伴った経済成長は、自然資産の維持や生態系への圧力緩和には不十分で、その規模とスピードを完全に相殺することは容易ではない。

 生産の改善が勝ることにより、経済成長は資源の使用、汚染、そして廃棄物において規制されることのない上昇をもたらしているのだ。事実、効率性は更なる消費と汚染を助長しているといってもいいかもしれない。

 経済学者ウィリアム・スタンレー・ジェヴォンズ博士が1865年に初めて観察された逆説がここにある。

 彼は、より効率的な蒸気エンジンの導入には、実際より多くの石炭消費を要するという偶然に気付いた。少なからず、新たな利益が追加生産に再投資され、価格の下落や需要の増加などを引き起こしたのだ。

 このような「リバウンド効果」は、経済全体に存在する。唯一の現実的な解決策は、消費量を減らすことだ。効率性を求めるのは中途半端な解決策でしかなく、最悪の場合、問題に対する取り組み自体が問題になることもある。

2. 技術に対する誇大評価


 グリーン成長の支持者たちは、これまで以上に優れた技術が解決策になると主張するが、それはどうだろうか。

 国際的な環境協定とその対策では、大規模な技術がCO2排出を閉じ込め貯蔵することができるものを近々生み出すと自信をもって仮定している。しかし、小規模でもそのような技術を私たちは未だ目にしていないのが現状だ。

 機械化農業は効率性と収穫高を上げると推進される一方で、ローテク農業は世界の食料需要を満たすための生産的手段として、より低い環境コストで行われているという事実が見落とされる傾向にある。

 明らかに、技術は生産と消費の環境負荷を減らすのに重要だが、グリーン成長はその役割を誇張しているといえよう。

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3. 利益を生み出さなければ行動しない人間社会

 おそらく、グリーン成長のための提案として最も説得力のある議論といえば、環境保護が利益をあげることに繋がるということだろう。しかし実際には、グリーン成長と環境保護の間は緊張関係が存在する。

 人間は、持続可能な介入が民間にとって魅力的な投資にはならない事実を知っている。例えば、ビニール袋代金の請求やプラスチックカップの禁止、またカーボン排出ラベルの導入など多くの企業はリスクを回避する傾向にあるため、率先してこれらの先導者にはなりたがらない。

 生態系の保全や電気自動車の普及は、民間企業にとって利益にはならないが、天然資源の枯渇や極端な天候などは一部の民間企業にとっては利益となる魅力的なものと捉えられることもある。人間社会は、利益を生み出す経済社会と密接に繋がっているのだ。

 もし、私たちが限られた環境内での生活に真剣に取り組むのなら、化石燃料や家畜、および化学肥料に別れを告げるべきだ。この解決を市場だけに任せていると、改善には恐ろしく長い時間がかかることになる。

4. グリーン消費は、文字通り消費に他ならない

 グリーン消費とは、買い物をする時に、できるだけ環境に配慮した製品を選ぶことによって、社会を変えていこうとする行為だ。

 グリーン消費を推奨することは、過剰消費という環境の病に対する一般常識的な解決策のように謳われているが、果たしてそうだろうか。グリーン消費の推進は、政府や企業の責任を一般の人々に委ねているに他ならないのではないだろうか。

 あるコメンテーターが、「我々は、個人として環境問題に取り組むことにうまく騙されているが、本当の犯人は無罪で逃れている」とコメントしている。

 物を生産するには、より多くの物を必要とする。グリーン消費という行為そのものが、依然として天然資源の抽出と利用、汚染、そして環境の悪化を助長しているに他ならないと言えるのは、再利用可能なカップやエコ機器、“持続可能な”衣類などを購入する時に、そうした意識がしばしば見落とされがちだからだ。

5. 当て推量の危険性


 グリーン成長の中心的な原則は、市場が「問題」と「解決策」双方の一部であるということだ。

 グリーン成長の支持者は、CO2への課税やクリーンエネルギーへの補助金、自然につける価値などの数字が正しければ、サステナビリティ(持続可能性)を促進することができると主張する。しかし、市場を通した環境問題への取り組みは、結果が保証されることなく多くの当て推量を伴う。

 炭素はもちろんのこと生態系や生物多様性は、経済的評価や市場内で代替できるものではない。市場における環境被害に値段をつけることは、自然界を汚染し、ゴミを捨てるための許可証を販売するようなものだ。

 市場のメカニズムはビジネスを持続可能な行動に導き、経済成長に繋げることができるが、厳格な法律と規制、また効率性や技術だけでは、人権や経済、雇用などの観点からみても環境問題を遂行することは困難だ。

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グリーン成長は、エネルギー消費と経済成長に関わる最重要課題


 環境社会を守るために消費量削減を考えた時、様々な側面を持つサステナビリティ(持続可能性)は個人だけでなく、政府やコミュニティーが責任を負うことが必要といえる。

 その有望な兆候として、次回のIntergovernmental Panel on Climate Change(気候変動に関する政府間パネル)の評価報告書には、消費への取り組みに関する章が含まれるとのことだ。

 また、英国では気候変動委員会が2050年までに二酸化炭素ネット排出量ゼロを提言。これが実現されれば、社会的に重大な変化になるであろうことを強調している。

 グリーン成長の需要を疑問視することは、より包括的で効果的なサステナビリティ(持続可能性)への第一歩となるだろう。

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